「200円生活──夢のために、私が選んだ“本気”の証」

飲食店を自分で始めたい──
ナパバレーで出会った赤ワインが、私の心に火を灯しました。
「飲食は、人生の記憶をつくれる」。
そう確信したあの日から、“夢”は“決意”へと変わりました。

でも、現実には大きな壁がありました。
開業資金。物件取得費。内装費。
家には妻と3人の子どもたち。守るべき家族がいます。
“夢”のために、誰かに甘えることはしたくなかった。

だから私は、ある生活を自分に課しました。
それが──**「出勤日限定、200円生活」**です。

使ってよいお金は、1日たった200円。
マクドナルドのホットコーヒー(当時100円)と、
休憩中に車の中で口にするミンティア(当時100円)。
その2つが、私の唯一の“息抜き”でした。

食事はすべて持参。外食は一切なし。
唯一の例外は、社内の食事会か、家族の記念日の食事会だけ。
それ以外では、どんなに誘われても断り続けました。

でも、自分を潰さないように──
もう一つだけ、許したご褒美がありました。

それが、「お休みの日だけ、1,000円以内のワインを1本買っていい」というルールです。

スーパーではなく、あえて街の酒屋さんへ足を運びました。
1,000円という限られた予算のなかで、
どんな品種を選ぶか、どこの国のワインを試すか、
店主に質問したり、ラベルを読み込んだりして、毎回が“勉強”でした。

それが楽しかった。
“ただのご褒美”ではなく、未来への投資であり、自分との対話の時間だったのです。

香りを感じながら「あの一杯に出会って、自分は変わった」と静かに思い返す。
週に一度のワインは、次の一週間を乗り越えるための“希望の一杯”でした。

この生活は、1ヶ月や2ヶ月ではなく──
5年間。

200円生活を続けながら、地道に資金を貯めていきました。
外食も、大好きな服も我慢。
でも、心の中はずっと前を向いていました。

だからこれは、ただの節約じゃない。
「夢を叶える覚悟の証」だった。

夢は、思っているだけじゃ近づかない。
願うだけでは、何も変わらない。
“本気”とは、日常の中で何を選び、何を削るかに表れる。

あの頃の自分がいたから、今がある。
そして、週に一度の“学びのワイン”が、今の私のソムリエとしての活動にもつながっています。

次回は、この覚悟の先に待っていた
「運命の物件」との出会い──そして“ゼロから始める挑戦”についてお話しします。

『つるっち』こと 今鶴 博でした。